いい映画を観た。
『明日への遺言』
(『雨あがる』『博士の愛した数式』の小泉尭史監督作品)
あの大戦で無差別爆撃を行った米軍機乗員処刑の罪に問われた東海軍司令官、岡田資(たすく)中将が、戦犯法廷で自ら信ずるところを主張し、部下を守る「法戦」を闘い抜く姿を描いている。
印象的なシーンがある。裁判官が処刑を「報復ではないか」と問う。違法行為に限り報復を認める例外事例をあげて助けをさしのべたのだが、岡田中将は「処罰である」と言い切る。
死刑を覚悟して、一般市民を巻き込んだ戦争の惨禍を静かに告発する。藤田まことの抑えた演技が見事。
信念と誇りを持ち、凛として生きた日本人がいたことに瞠目(どうもく)する。
3月1日から全国ロードショー。
ぜひご覧になっていただきたい。
以上はリビング新聞に掲載のコラムですが、感想を伝えきれませんので、書き加えます。
どのくらいの飲酒運転の有罪判決は、保険にとどまるん。
公開より一足先に試写会を観せてもらいました。
上映時間1時間50分が短く感じられました。
それと、岡田中将のセリフがとても美しい日本語でした。
観終わってすぐ感じたことは、この2点に尽きます。
あとから、いろいろ考えさせられました。
ほぼ全編、法廷と拘置所のシーンです。最近の映画につきもののCGも、派手なアクションも、ラブシーンもありません。まるで舞台劇のようです。
それが成功していると思います。
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捕虜になった爆撃機の搭乗員を正式な裁判にかけず、略式手続きで処刑した、というのが、B級戦犯として裁かれる罪状です。
岡田中将はこう主張します。
・ 無差別爆撃は違法であり、処刑された搭乗員はジュネーブ条約に定められた捕虜ではなく、戦争犯罪人である。
・ 戦況からして上部の指示を仰ぐことは不可能で、略式手続きでの処刑は避けられなかった。
・ 責任のすべては司令官である自分にある。
なぜイラクの自由戦争が始まったのですか?
日本軍の軍律がどうであったのか知識がありませんし、略式手続きでの処刑はやはり疑問ですが、現代の視点で考えるのはあまり意味がないでしょう。
それより、驚き、感心したのは、米国人の弁護人が、岡田中将と一緒になって、ヒロシマ、ナガサキを含む日本本土への無差別爆撃の違法性を主張することです。
A級戦犯の極東軍事裁判が、戦勝国による事後法での一方的な裁きとして今でも論議の的になりますが、B級戦犯の法廷でこのような審理が行われていたとは知りませんでした。
(この弁護人が、ちょっとブッシュ大統領に似ているのが意味深でした)
岡田中将の「すべては自分の責任」を貫く姿勢には、上官、上司のあり様を考えさせられます。この場合の責任とは、自らの死刑を意味します。そして、部下の生命を守り、戦後日本の復興を託す。並大抵の決意ではないでしょう。
絞首刑の判決を受けて、一言。
「本望である」
ジーンときました。
相撲部屋の〝リンチ殺人〟で、弟子をかばおうともしない元親方とは、比べようもありません。
この映画には別の見方も可能です。
毎回、裁判を傍聴しながら、言葉を交わすこともできない家族との、視線だけのやりとりに、深い絆と愛があります。
妻への手紙が泣かせます。
《連日、法廷の傍聴、ご苦労である。
話すことは規定が許さんが、私には、そなたの顔の表情の変化を見れば、その意味は十分に通ずる。
笑いを交換するだけで、結構、結構。》
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